のびのびおんがく

心に残ったライブのことを書きます。

つづく

2019年3月27日(水)、高槻RASPBERRYへ行ってきました。

今月末をもって閉店する“ラズ”に愛を込めて企画されたライブ。その名も、「アイ・ラズ・ユー,ユー・ラズ・ミー」

 

発起人はスムルース。しかしこのバンド、3年前に無期限の活動休止を発表したバンドです。今回は、活動再開!ということではなく、ソロで活動しているスムルースのボーカル「トクダケンジ」のサポートメンバーとして、ギター回陽さん、ベースのテツロウさんが集まりライブをするという日でした。

結局それ、スムルースやん。そう感じて当たり前で、一見まわりくどい話なのですが、私はとてもスムルースらしく真摯でまっすぐな決断だと思いました。詳しくはテツロウさんのブログを読んでください。(10回読んで10回泣きました。)

ameblo.jp

チケットはソールドアウト、ネット予約では即完売でした。開場前から長い入場列ができていて、会場はいっぱいいっぱい。

一番手はグラスニットジャガー。ベースはスムルースのテツロウさん。

一時活動休止していたそうですが、4年前に復活して、年に1度ライブをやっていると話していました。この日のように、さあ集まろう!と音楽ができるなんてすごく素敵です。青春の音は止まないし、音楽は時をかける、そんなパワーを感じるようなステージでした。

二番手Eurekaは、ボーカルの優利香さんを中心に2018年に結成されたバンドで、スムルース回陽さんがギターを担当しています。バンドとしてのラズの出演は初めて。閉店するとはいえ、新しい音楽の発信地として、新しい出会いの場としてここはあるということです。回陽さんは「ラズが閉店するときいて、某バンドが活動していた場所ということで、僕が某バンドの某ボーカルの人に連絡して。」とこの日のいきさつを話してくれました。

 

ずっと高槻から全国へ歌を届け続けているナカノアツシさん。高槻魂のフェスをはじめ徳田さんともいちばん近い距離で活動してきたナカノさんが、三番目を務めてくれるのが心強いなと思いました。私はナカノさんのステージを見るのはずいぶん久しぶりでしたが、「喜びの種」の一節「笑われていたって 涙されるよりはいいや」この底抜けの前向きさに元気をもらったことを、歌いながら思い出しました。

MCでは「徳ちゃんから、連絡もらって。ワンマンやるには荷が重いということで…」と裏話を教えてくれつつ。徳田さんはこの日のためにダイエットに励んでいたそうですが、「さっきぼんじり三本食べてましたー!」と暴露されて、和やかに次の曲。「大キライダー」でも、スムルースのことを歌詞に入れてくれていました。

最後は、「電話ボックス」。なくなっていくものもあれば、形はなくなっても、のこっていくものはあると歌ってくれる優しさ。

あたたかい雰囲気に包まれて、最後のバンドにバトンをつないでくれました。

 

突然ですが、私は高校生の時からスムルースのファンです。ライブのことを覚えておきたくて、ブログを書いています。記憶が違うところもあるかもしれませんが、雰囲気だけ。どこかのだれか、私のような人が読んでくれたら……。というか、いつか私がもう一度思い出すために書いている気がします。

 

いよいよ、トクダケンジバンドです。歓声と拍手に包まれてメンバーが出てきました。年をとらない回陽さん、テツロウさんはいつか見たような衣装で。そして、ちょっとだけシュッとした?と噂の徳田さんと。ドラムサポートはEurekaの清家トモキさんでした。

1曲目は「限界を超えて」。トクダケンジソロ活動での作品です。曲はトクダワールドで間違いないけど、スムルースの曲ではなくて、イントロが流れた時にピンとこない自分。そうか、今日のステージはやっぱりスムルースではなくて、あくまでもトクダケンジのステージなのかあと思いました。でも、曲が終わった瞬間。

徳田「こっから後全部スムルース!!」

この一言で、歓声。「待ってました!」の熱気を一気に感じました。聞き馴染みのあるイントロ、2曲目は「非常にイェイね」。私は気付いたら手拍子をしていて、テツロウさんや回陽さんと一緒に「ワン・ツー・スリー」と笑顔でカウントしていて、同時に大泣きしている自分。これや、これ!!わたしはスムルースを聞きたかったんだと、一瞬で悟りました。回陽さんの体をちょっと斜めにギター弾く姿とか、テツロウさんのキラッキラの笑顔とか、徳田さんのよくわからない動きとか、そうそう、これがわたしの大好きな人たち、と音楽と光景に懐かしさと愛おしさを感じます。

徳田「もっとずっしり構えてようと思っててんけど、ライブってすごいな。そうさせてるのはあなたたちです!!」

回陽「思ったより感極まっとるやん!」

徳田「どちらかというと」

回陽「選択肢与えてへんし!」

徳田「…ぇ?!」

この2人の会話の絶妙な噛み合わなさと見守ってる (黙ってる?)テツロウさんという構図もまた懐かしい。

そして、次の曲について、徳田「もう一生やらへんかもしれない曲やります。人生で最後に歌うかもしれへん。」と言い出します。テツ「メジャーに行ってからは、一回やったかやってへんかくらいの…」ラズで演奏していた頃の曲、ということで、何かなあとワクワクしていると、3人が「ハイッ!」とほっぺを叩いて歌い出したのは「大吉日」。ぴょんぴょんと飛び跳ねながら演奏する、身も心も踊る音楽。

 

MCをどこで挟んでいたか忘れてしまいましたが、テツロウさんの衣装についても。

回陽「すごない?気付いた??」

徳田「あっ!」

テツ「ラズベリーホールに出ていた頃の衣装。多分、スライドブルーのアー写で着て以来の…」

徳田「虫食いにもあわんと…笑」

こういうところがテツロウさんの素敵なところです。

4曲目は「冬色ガール」。徳田文学の真骨頂。春は来ると確信しました。5曲目「バラ色ダンス」コードが聞こえてきた瞬間から、うきうきしすぎて泣き出してしまいました。もう、よくわからないけれど幸せだなあと。

 

ラスト「祝福の紙吹雪」では、逆さ書道のパフォーマンスもやってくれました。

「ずっと今日が最高でやってきましたが、今日が最高です。」

大きな書道板に「一歩」と書く徳田さん。「今日は、皆さんの一歩でもあり、スムルースの一歩でもある。」

ズンズンと線を書き足していき、書道板を180度ひっくり返すと、そこには「進め」と書いてありました。

「伝えたいこと。スムルースからのありがとう」

そう言っていたと思います。

徳田さんの歌詞の1つ1つが染みて、タオルを回している光景が嬉しくて、ベースソロ、ギターソロ、ドラムソロ、と続くあの流れには、やっぱりドキドキして。とにかく聴けてよかったです。

 

アンコールは、誰もがもう一度出てきてほしいと願ったアンコールでしょう。出てきた徳田さんは、「ライブってすごいなあ。」「いつかみた顔なんよ!いつかみた壁!いつか聞いた音!!」と徳田さんにスムルースが蘇ってきたかのような発言。それ以上多くは語らず。「もう、曲やる!」と言っていたような気がします。

最後の曲は「スーパーカラフル」。スムルースの優しさと、たくさんの思い出の詰まったこの曲。めいっぱい楽しんで、声を合わせて、踊って、笑って、泣いて、気付いたら終わっていました。

 

拍手が止まらず、ダブルアンコールになる会場。私は少しの迷いもありつつ、拍手をやめられない自分との小さな葛藤がありました。SEも流れているし、呼んじゃダメなんじゃないかなと…。

すると、出てきてくれました。

テツロウさんが、今日に至るまでの話を。

「今日は、閉店の報を受けて、恩返しできたらなあという思いもあって出させてもらうことにしたのだけど、店長さんはずっと休みなく働いていて、さすがにこの日だけは休もうと思って空いていた日が3月27日で、結果そこに入れてもらいました。恩返しどころか…」

演奏の準備はしないメンバー。そこで徳田さんが口を開きます。

徳田「ここでお腹いっぱいにしたくないんよ」

そして、回陽さんも「ちゃうねん、練習してないねん。それに、今日はトモキくんで。今日のために7曲体に叩き込んできてくれた。」と。

「だから、拍手を浴びるためだけに出てきました」と正直に言いながら出てきてくれた彼ら。場所に、人に真摯に向き合ってくれる彼らに、私はとても安心しました。そういう人たちだよね、と。徳田「これからも、お見守りください。」そう言っていました。

あたたかく力強い拍手に包まれた会場。テツロウさんは「また会いましょう!」と笑顔で言ってステージを去って行かれました。

 

私がスムルースと出会ったのは2010年のことです。なので、彼らがラズで活躍していた頃のことはよく知りません。でも、ラズがあったからこそ、今の彼らがあります。そして、今の私がいます。

ライブハウスは、人と人をつなぐ場所。夢がたくさんつまっています、なんていうとクサイかもしれませんが、私はその夢を見ている1人でもあって、ライブハウスという空間がとても大好きです。ライブハウスに来て、こんな日があるから生きていきるんだって思える人もいます。夢と夢をつなぐ場所。誰かの明日につながる場所。

そんな場所があったおかげで今がある。

今までラズの歴史をつないできた歴代の店長さん、スタッフさん、バンドマン、お客さん。全ての方々に敬意を表したいと思います。

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帰りがけ、徳田さんを発見して声をかけようとすると、「あっ!」とわかってくださいました。声をかけたはいいものの、なんと言おうか、とにかく今日のことはお礼が言いたい、それ以上のことはもう、、喋りながら自分の邪念が顔に出てしまったのか、それを察してくれたのか徳田さんは、

「つづく。ということで!」

いつもの感じで、そう言ってくれました。

 

スムルースはいつもそうでした。つづくのです。デビューの時も、活動休止の時も、つづく の言葉はありました。「桃の国から」でも「やさしくつづくみらい」でも、どんなときも、過去も今もそのつづきも、希望で満たしてくれていました。


これまでもこれからも、みんな幸あれ!とはいえ、願ってもそれは簡単なことではない、なかなかやりたいようにならない、幸せは はかない。だからこそ、スムルースの音楽は「全肯定」、ともに進んできた仲間を讃えあって、孤独も希望も一緒くたに音に乗せて、鼻歌まじりにやっていこう、ともあれ進んで行こうよと歌っていたのだと思います。私が彼らから受けた最大のメッセージは「ともにいこう」です。そのメッセージをずっと私は自身の力にも変えてきました。

 

「一歩」を踏み出す勇気。それを教えてくれたのもスムルースでした。進むのも、立ち止まるのも、あなたの決めた道ならばそれは「一歩」だということ。

そして、私はこの日気付きました。「つづく」のは、私たちが一歩ずつの歩みを止めていないからだということを。

 

この日、逆さ書道で「一歩」が「進め」になった瞬間を私は忘れません。

 

ありがとうスムルース。大好きです。

また会いましょう。

 

2019年3月 大吉日