のびのびおんがく

心に残ったライブのことを書きます。

上田づくし

12月2日、京都メトロに行ってきました。

10月に私の思い出からの脱退を発表(【スパゲットー上田脱退について】 | 私の思い出)、10月19日高円寺UFOクラブでのキャンプを最後に脱退したスパゲットー上田さんの送別会的キャンプでした。

タイトルは、さよならリーダー、上田づくしスパゲットー上田壮行会

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18:00の開場時間の少し前に着くと、METORO前にはずらりと列が。最後の上田さんの最後の勇姿をみに駆けつけた人々で溢れかえってました。
入場すると、早速メンバーさんが物販にいたり、ジーザスさんが出店していたり、メンバー総出で作り上げる上田壮行会が展開されていました。

上田づくしは、バタやんさんの諸注意から始まります。写真・動画撮影を許可している私の思い出ですが、今回「動く上田は目に焼き付けてください」と動画は禁止とのことでした。「1、2、うえ、だー!!」との掛け声で登場したのは、本日の主役、私の思い出元リーダースパゲットー上田。

何が始まるのかと思うと、ストラップの代わりにヒモをつけたギターを持って、弾き語りを始めた上田さん。曲は宇多田ヒカルtraveling」。これはこれはひどい代物で、泣きにきた客の気持ちの当の本人が踏みにじるというか、名曲を無意味化する力が半端ないというか、たくさんの客の前であの歌を弾き語る上田さんはやはり只者ではない、ということをひしひしと感じる時間でありました。

上田づくしの内容は、貴族さん進行の上田さんとのジャンケン大会、上田さんの弾き語り「毒キノコ」「スズメバチ」、登山隊長のスライドショー、などなど、涙なしには見られない感動的なものばかり……な訳はなく、文化祭の出し物みたいな手作り感のある楽しい時間が。 出し物の合間には、DJ SHINさんの愛のこもった選曲で時間が彩られていました。

これまでの出し物と、DJでキャンプを楽しむ準備はバッチリな会場。上田さんの最後の勇姿を焼き付けるぞという気概は、会場のボルテージを上げていました。
キャンプはいつものインディージョーンズのテーマで冒険が始まります。ステージに上がったのは、メンバーとサポートの安東ジョーンズ博士の5人。「ところで上田おらへんなあ」とあたりを見回す隊長に、「いつまでひきずってんの!!」とジーザスさんが一喝します。「上田は星になったんや。」という設定から始まるキャンプでした。

1曲目は「Let's go THE CAMP」で、上田さんがいない状態でのステージ。「きっとここぞというときに出てくるのだろう」、という期待の高まる1曲目でしたが、「ここぞ」を担ってきたリーダーの重みも感じる時間となりました。
最初のここぞは、2曲目「虫とり」の後半にやってくる上田虫(※虫に扮した上田)。続いて、「つり」による上田魚(※魚になりきった上田)。

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虫とりで捕まえた上田虫は、俺たちの宝石箱である虫かごに入れたまま。
上田魚は、「気持ち悪い。キャッチアンドリリースや。」と言って、海に還した隊長。
宝石のような思い出の一部ともなるけれど、大海原で達者で生きろよ、というメッセージが込められていたのかもしれません。

次の「party time」では炸裂笑顔、ドキドキパジャマの上田さんが歌ったり踊ったりする、人生賛歌。踊り切って、退場。

そして上田さんのいないMCの時間。「さっきから上田がチラチラ見える気がするんやけど。」と隊長が言うと、ジーザスさんが「ナンセンス!!」とまたもや一喝。
「上田は死んだんや。上田上田ばかり言っていては、本人は浮かばれないだろう。」「胸に手を当てて、“あ”、から始まる大事なことを思い出そう」ということに。でも、メンバーたちはなかなか思い出せません。

「アドベンチャーでしょ!!!」

「アドベンチャーするために集まったんや!!」

そんなことを話していると、上田お化けが登場。

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皆で、成仏させようと、仏花を持ってきたり、落雁お供えしたり、お経唱えたり、という悪ふざけコントが展開されます。
そして「夜中のアドベンチャー」という阿鼻叫喚の恐怖の一曲。歌詞を文字り「飛び立てやすひろ」と上田さんを成仏に仕向けたところで演奏が終わります。

そんなこんなで「もーええわ!!」と上田さんが怒って帰っていき、物語が進行します。そこで、震えだすジーザスさん(取り憑かれたのかと思った)は、本当のことを告白。

「実は、上田は死んでない」

死んでなかったのか!!と茶番をやりまくった後、「Don't stop BBQ」で仲直り。8年間同じコール&レスポンスで盛り上げてきたリーダーに敬意を!そして「チャイナライダー」へ。

間にオペラを挟んで、別れを演出する時間も。話の途中に、嵐がやってきてみんなを守るために「俺が羅針盤になる!!」と先陣を切ったリーダー。やっぱり死ぬんか!と心の中で突っ込みつつ、よくわからないけど最終的に感動的なラストを迎えて終わりました。


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一体上田さんは生きてるのか死んでいるのかがわからない、というキャンプは終盤です。

「おにぎりユニバース」
“ドキドキワクワクメソメソプンプンぜんぶ 迷わず握れ”という歌詞には、私の思い出の優しさと強さが滲み出ているのでした。会場全体でおにぎりを握りまくり、自由をさけんで、気付いたら終わっている。そんな幸せな時間がすぎていきました。

そして、アンコールでは、上田さんの師匠K-106の啓太郎さんと一緒に、「お米フリーク」です。
上田くんすごいとみんなで歌い踊って大盛り上がり。この日のためにある曲じゃないのかと思いました。知らない人が聞いたとしたら、ノリはいいが内容はないそもそも上田って誰?という内輪受けの曲だったかもしれません。しかしこの時、スパゲットー上田はとてもすごいという思い出を共有したところでこの歌を大勢の人と歌った。内容がありすぎる、愛に溢れすぎた曲になっていました。
キャンプは終了。

そして、フィナーレへ。スパゲッティ(スパゲットー上田の素らしい)をアフロに刺されながら 、上田さんは「贈る言葉」を熱唱。

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最後に、スパゲットー上田の象徴である、アフロをおくのでした。

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気付いたら上田さんは、みんなに運ばれていました。


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寂しいけれど、ショーとしてとても楽しく、別れなんだけど前向きなキャンプにただただ感動しました。

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最後の上田さんの勇姿、少しでもお伝えできているでしょうか。

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<セットリスト>
Let's go THE CAMP/虫とり/つり/party time/夜中のアドベンチャー/Don't stop BBQ/チャイナライダー/オペラ/おにぎりユニバース//お米フリーク


他にも勝手に感動したことがたくさんあって、ああ、やっぱり私は私の思い出が好きと再確認した日でもありました。

今回のキャンプで、すごかったこと。
上田さんの脱退を、ある種のネタとしてステージに落とし込んでいたこと。
変に思い出話をしたり、上田さんに対する、あるいは上田さんから熱いコメントがあったり、ということが一切ありませんでした。なので、初めて見た人がいたとしても、ショーとして楽しめるのではないでしょうか。前しか向いていないし、外を意識していると思います。視野が広い。

セットリストが素晴らしかったこと。
ネタにしたからといって上田さんの脱退を軽んじているわけではありません。セットリストは、いかに私の思い出が私の思い出として進んできたかということを感じるものでした。
最新アルバムのリード曲「虫とり」から、初期から演奏している「チャイナライダー」といった懐かしい曲(私はキャンプで聞くのは初でした)、定番キラーチューン「おにぎりユニバース」、ずーっと上田くんすごいと歌い続けてきた「お米フリーク」。というように、全体のバランスがとても良いと思いました。お客さんによってそれぞれの思い出と照らし合わせたり、上田さんの功績を讃えたり、といろんな楽しみ方のできるのではと思います。

メッセージ性の高い曲を歌わなかったこと。
どういうことか。一番私が思ったのは「つりばし」を歌わなくてよかったと。「つりばし 」は12小節ほどの短い歌に、歌詞カードにしてたった5行の歌詞。これらを、私の思い出メンバーがひとりずつ歌いあげて、5人で私の思い出であるというメッセージ性があるのかないのかわからない曲です。しかし、聴くとわかるのですが、この曲における上田さんの果たす役割は大きいです。もし演奏していたとしたら、未練を残すかもしれないと思ったからです。

そして、まだ言いたいことがある。私の思い出という存在は、不思議で魅力的です。

“メッセージ性のない歌詞”が一種の売りでもある私の思い出に対して営業妨害かもしれませんが、聞けば聞くほど、内容がないよう(ダジャレです)には思えない。というより、本当になかったとしても、何らかの意味を勝手に持たせてしまうことが人間の性であるのかもしれません。そんな野暮な人間の姿を投影させるという狙いもあるのかもしれません。ないかもしれません。
意味があるのかないのかわからない。本気なのか冗談なのかわからない。彼らの存在は、フィクションのような、ノンフィクションのような不思議な存在です。いつも忘れそうになるのだけど、あんなばかなことしているのに、カッコよすぎることも嘘みたいなんですよね。

曲について、以上のように思うのには理由があります。
上田さんの脱退が発表されたときに、びっくりしたことがありました。それは、今の状況にぴったりな曲もなければ、全部ぴったりにも思えるという不思議な感覚に陥ったことでした。

www.youtube.com


なんでだろう。と考えた時思ったのは、アドベンチャーロックは生きることと直結しているから。ということでした。
これまでもブログであることないこと書いてきましたが、キャンプってなんだろう。アドベンチャーってなんのことだろう。私は、いつもそんなことを考えたり考えなかったりしています。ちなみに、キャンプの時は頭からっぽです。

さて、キャンプの話に戻ります。今回の上田づくし、ふと「通過儀礼」という言葉が頭をよぎりました。
通過儀礼とは、人が生きていく中で新しい地位、段階を獲得していくときに行われる儀式といったところでしょうか。

むかーしにファン・へネップという人が世界中のいろんな儀式やお祭りは何のためにあるのか、そしてその儀式のストーリーを解き明かすそう!とした研究をして、『通過儀礼』という本を書きました。

「ある集団から他の集団へ、またあるステータスから次のステータスへ、次から次へとなぜ移っていかなければならないかということは、〈生きる〉という事実そのものから来るのである。つまり、ある個人の一生は、誕生、社会的成熟、結婚、父親になること、あるいは階級の上昇、職業上の専門化および死と言ったような、終わりがすなわち初めとなるような一連の階梯からなっているのである。これらの区切り一つ一つについて儀式が存在するが、その目的とするところは同じである。つまり、個人をある特定のステータスから別の、やはり特定のステータスへと通過させることに目的がある。」

人生には「いつも越えて行くべき新しい敷居がある」そのために、通過儀礼を行うことで、人生の段階を進んで行く、ということを言っているのです。そういった儀式がいかに生きていくことと直結しているかということも説いています。

ファン・へネップは、様々な儀礼を比較検討して、3つの展開があることを見つけます。
「分離」「過渡」「統合」というストーリーです。
分離は、今までの地位や環境から分離させるということです。今までのままでは、新しい存在に生まれ変われないので、一旦まっさらにするというイメージ。つまり、今までの存在に別れを告げること。
過渡は、俗世界から離されることで何物でもない状態になり、次の地位へ向かって行くということ。
統合は、一段階バージョンアップした状態で、日常の世界に戻してあげるということ。

儀式の中でそのストーリーをたどることで、これまでの自分を捨て新たな地位を手に入れるのです。つまり、儀礼の前と後ではそれまでとは別人になる、「生まれ変わる」ということです。

これを見て思いませんか。今回の、上田づくしのキャンプからフィナーレへのストーリー。

上田は死んだ(分離)→上田は幽霊になった(過渡)→上田はアフロを置き、普通の上田になった(統合)

私の思い出のリーダーから普通の上田へ「生まれ変わる」
5人の私の思い出から、4人の私の思い出へ「生まれ変わる」

そのための儀式だったのではないでしょうか。

生きていくことと直結しているもの。それがキャンプ!

そんな一つの答えを見つけたキャンプでした。
以上、トンデモキャンプ論でした!(怒られそう!笑)


いろんなことを書いてしまいましたが、そんなのはどうでも良い事です。
キャンプは楽しくて、私の思い出はかっこよくて、アドベンチャーロックは素晴らしい。それだけのことです。

本当のことは、どこにもない。その目にうつったことが本当。
キャンプで何が起こっているのか。そんなかっこいいのか。おもしろいのかおもしろくないのか。
みーんな見に来たらいいと思います。そして、ハマるといいと思います。


散らかってしまったのでまとめます。笑
今年は、いろんなところにキャンプにいきました。どれもいってよかった。
今年一番よかったことは、いろんな客の方とお知り合いになれたことです。楽しい思い出を共有できたこと、感謝しかありません。
そして、ブログ読んでくださってる方、いつもありがとうございます。そして、好き勝手書いてすみません。

私の思い出は、来年もどんなアドベンチャーを見せてくれるのか、今から楽しみですね。
上田さんは脱退したけれど、自分の思い出に上田さんがいることって最強でしょう。
上田くんすごい!私の思い出すごい!客もすごい!

今年も1年お世話になりました。
また来年もよろしくアドベンチャーです。

また元気にキャンプでお会いできますように。